俺だけ猫になる件-2
(え、俺ネコになってる??)
(…この服に貴重品、そのままには出来ないよな)
ベンチの上に、抜け殻のように残っている自分の服。
スマホに家の鍵もあるし、そのままにしておく事も出来ない。
(あ、もしかして、インベントリに入れられるか…?)
そう思い、インベントリを呼び出してみる。
ニャーニャーニャー(インベントリ)
声を上げると、いつもの画面が現れた。
猫語でも大丈夫なのかと、安堵する旬。
画面の中に、服を押し込む。 (うぅ…一苦労だな)
そして、先程から何か騒がしい、影の中。
もしかして…魔法兵達が何かやらかしたのか…?
いつまでネコのままなのかは分からないが、そのままでも困る。
事情を聞いてみるため、影と魔法兵を呼び出すことにする猫旬。
ニャーニャー、ニャー(出てこい、キバ)
旬が呼びかけると、キバが1人の魔法兵の首根っこを掴み、現れた。
こちらの様子を伺いながら土下座をし、反省した様子のキバと魔法兵。
おいおい、ハイオークの群れを従えていたキバがこんな様子とは。。
その様子の可笑しさに、思わず笑ってしまう。
何があったのかネコ語でニャーニャー聞いてみると、言葉の話せない2人は、ジェスチャーを交えて説明してくれた。
どうやら魔法の練習中、魔法兵の魔法が暴発し、俺に猫になる魔法がかかってしまったようだ。
状態異常無効の効果も効かないとか…貪欲の玉も使ってるんじゃないのか??
時間が経てば、寝てる間に戻るだろうか。
ひとまずいきなり魔法が解けて裸で元の姿に戻っても困るし、家に帰ろう。
猫旬は、反省した様子の2人を影に戻し、猫の姿で家に帰ることにした。
*
(ふ~ん、ネコの視界はこうなってるのか。猫の世界も案外悪くないな)
そんな風に思いながら、颯爽と、優雅に風を切って歩く、ネコになった旬。
優雅に公園を歩いていると、視線を感じた。
振り返るとそこには、 ソワソワしながらこちらを見つめる、監視課の犬飼さんがいた。
(犬飼さん… 名前に似合わず、ネコ好きなのか?)
こっちをじっと見ている、犬飼さん。
服装から見ると、ランニング中のようだ。
いつものスーツ姿にサングラスじゃ無いから、一瞬分からなかった。
黒色のシンプルなウェアに、黒のスニーカー。 なかなか似合っている。
*
(犬飼さん、おはようございます)ニャー 、ニャーニャー
挨拶くらいきちんとしなきゃなと、一応、声をかけてみる。
影達みたいに伝わるのかな?
呼びかけに対し、 犬飼さんは、無表情でこちらを見ている。(いや、少し頬が緩んでいる?)
影でもないし、さすがに言葉は伝わらないようだ。
しばらく無言で見つめ合っていると、犬飼さんが動いた。
どこに行くのかと眺めていると、道草にある猫じゃらしを手にとったようだ。
(ははーん、猫と遊ぼうっていうのか。 でも俺は猫じゃなくて、人間だ。 残念だが、釣られないぞ。)
犬飼さんが片膝をつき、猫じゃらしを俺の方に向かって振るう。
(だから、俺は釣られないってば)
そんな心の声とは裏腹に、猫旬は猫じゃらしを視線で追う。
………
ニャッ ニャッ ニャッ
も~可愛いな~にゃんこ~ ほらっほらっ よしよし
………

(はっ!俺は何を!)
気付くと、満面の緩んだニヤケ顔の犬飼さんが振るう猫じゃらしを、無心で追いかけていた。
(危ない!このままだと本当に猫になってしまう!)
焦った旬は、犬飼さんを置いて、逃げ出した。
公園には、名残惜しそうに猫を後ろ姿を見つめ、猫じゃらしを手に持つ犬飼さんが残された。

あとがき
普段クールな犬飼さんが動物好きだったら…。
忙しいから、ペットを飼うことは出来なくて。
人目を気にしながら、こっそり可愛がっていて欲しい。笑
首根っこ掴まれていたのは、魔法兵のロン。
やらかしちゃうと言えば、ロンですよね!笑
イグリットに影の中で絞められてるかなぁとも思ったけど…
影たちはネコになった旬が可愛いから、案外喜んで、キャッキャしながら見守ってるんじゃないかと思う(*´Д`)
こちらはピッコマ配信中のハンターオークションの章を読んで、mizが想像力を膨らませて書いた、二次創作です。
苦手な方は閲覧をお避け下さいませ。
お目汚し、失礼します。