俺だけ猫になる件-前回までのあらすじ
公園でデイリークエストをこなしていた旬。
魔法兵の魔法の誤爆により、突如、ネコに!
トレーニング中の犬飼さんとネコとして戯れるうちに、
心までネコになってしまいそうで焦る旬であった。
俺だけ猫になる件-3
公園を後にした旬は、家路を急いでいた。
(このまま心までネコに染まっちゃ、たまったもんじゃない…)
(それに家につくまでの間にもし途中でネコから人間に戻ったら…服も来てないしヤバいだろ)
公園から旬の住むアパートまでは、そう離れてはいない。
ネコの身体で颯爽と歩く旬は、もうそろそろ自宅に到着しようとしていた。
(猫の姿じゃカギは空けられないな…まぁ支配者の手を使えば、なんとか開けられるか?)
最悪、影の兵士に扉か窓を破ってもらえば良いだろう。
余計な出費にはなるが、窓一枚、扉一枚付け替えるくらいの出費、今の俺にはそう問題ではない。
葵には…怒られるかもしれないけどな。
(そろそろ葵が学校に行く時間か、学校に行くところだけ、見送ってやろうかな)
家路に向かっている途中にも、葵と同じ学校に通う高校生たちを何人か見かけた。
ネコの姿で声をかけても、葵も気づかないだろうな…
なんてことを考えながら、旬はマンションの前に辿り着いた。
*
いつもと変わらないマンション。
しかし、ひとつ、おかしな点がある。
怪しげな二人組の男が、マンションの前の路地に、立っているのだ。
普通の人であれば、こんな朝の忙しい時間に、あんな場所に突っ立てなんかいない。
(なんだ?あいつら)
不審に思いながら、旬は聴覚を研ぎ澄ませ、男たちの会話を盗み聞く。
男1「ここが水篠ハンターの住んでいるマンションだ」
男2『元E級ハンター!S級になって人生大逆転! 張り込みしてれば、良い記事が書けそうですよね、先輩』
男1「情報規制なんて、ふざけてるよな。ハンター協会がなんだってんだ。一流記者を舐めるんじゃねぇ!」
男2『先輩!かっこいい!一生ついていきます!! 調べたところ、水篠ハンターにはずいぶん溺愛している妹がいるそうです。』
男1「その妹を手名付けて、そこから水篠ハンターと仲良くなっていけば…独占スクープをかけるに違いねぇ!!」
男2『もうそろそろ、妹が登校してくる時間ですね。噂じゃずいぶん可愛いらしいですよww』
男1「ふふ、俺たちの大人の魅力で、仲良くなってこうぜww」
*
男たちの会話に耳を傾けていた旬。
(勝手なこと言いやがって…おれの葵を手名付けるだと?)
ネコの姿のままではあるが、旬からは、殺気が漂っていた。
家族思いの旬は、自分がS級になったことで、家族の平和な日常に支障が出ることを何より嫌う。
まだ高校生の葵。あいつらはどう見ても20代後半。
そもそも仲良くなろうだなんて、犯罪だろう。迷惑でしかない。
我慢の限界になった旬は、男たちの前に立つ。
*
マンションの外で、そそんな事態が起きていることは、露ほども知らない葵。
「も~!なんでお兄ちゃん起こしてくれなかったの!!」
そう怒りながら、急いで学校に行くための身支度を整えている。
模試が近づき、最近は毎晩夜遅くまで勉強している葵。
朝起きられず遅刻しそうになっていることも多く、そんな日は、早朝のトレーニングから帰った旬が葵を起こしてくれていたのだ。
「あぁ、もう、朝ごはん食べる時間もない…!」
葵はトーストを手に取り、玄関を飛び出すのであった。
*
マンションの外。
トーストを咥えた葵が、走りながら出てきた。
「わー!間に合うかな??」
すれ違うご近所さんに早口であいさつしながら、走る葵。
クスクスという笑い声も聞こえ、なんとものどかな朝だ。
だが一点。いつもと違う点がある。
マンションの指揮とを出た葵が、学校に行くべき道を曲がろうとすると、男が二人倒れていた。
「えっっ、死んで…る??」
驚く葵、だが男たちが何やらボソボソうなされているので、死んでいないとすぐに分かった。
「わぁ、変な人たちだ…関わらないで無視しとこ」
倒れる男を横目に、近づかないよう少し距離を置きながら、颯爽と走る葵。
すると、一匹の黒猫が、こちらを見ているのに気が付いた。
「わ、可愛い! 猫ちゃん、行ってきます!」
笑顔で声をかける葵。
「にゃぁ~~お」と、気の抜けた返事をするネコ。
((なんだかあの猫、お兄ちゃんみたい))
まさかほんとに兄だとは、露ほども思わない。
ネコになった兄を横目に、走って学校に向かう葵であった。
*
旬は、走って学校に向かう葵を、ネコの姿のままじっと見つめる。
(あいつ、なんでパンくわえながらはしってるんだよ…笑)
と、あきれた様子だ。
(帰ってきたら、からかってやるか)と、クスクスとする旬。
先ほどの二人組は、旬が殺気を伴う視線で睨みつけたところ、腰を抜かして倒れこんでいた。
『ひぃぃぃぃ!!化け猫!!!!』
そう言いながら気絶する二人の姿は、中々に滑稽だった。
そうはいっても、またこんな輩が湧いたら困るしな。。
と、旬は自警団を務める影の兵士の数を増やすことにする。
そんな風に考えながら、マンションの階段を上っていく旬。
(よし、ネコの姿のまま、家まで帰ってくることが出来た)
ほっとしながら、玄関の前に立つ旬。
支配者の手で、中からカギを開けようとする。
しかしその時…
~~ぼわぁぁぁん~~
旬の身体が光る。ネコ化の魔法が解けたのだ。
「え!!!!」
一糸まとわぬ姿で、玄関の前に膝をつく旬。
「隠密!!!!」
とっさの判断で、隠密で姿を消した!!
((誰も見てないよな??))
自宅の前で、服も着ないで立っていたなんて知られたら、近所の人になんて言われるか分からない。
「あそこの息子さん、いや、S級ハンターの水篠旬って、露出狂らしいよ…??」
お茶の間の格好のネタのハンター。
そんなスキャンダラスな話が出回れば、いくらハンター協会が情報規制をかけていようと、話が広まるのなんてあっという間だ。
幸い、近くに人影はいない。
旬は隠密状態のまま、インベントリから服と荷物を取り出し、そそくさと着替える。
「良かった、誰にも見られなかったみたいだ…」
服を着た旬は、改めて辺りを見回し、安堵する。
ガチャっ と扉を開け、家に入っていった。
「散々な一日の始まりだな。しばらくゆっくり休もう…」
そうつぶやき、ベッドに倒れこむのであった。
*
監視課の犬飼は、とあるマンションの外で、立ちすくんでいた。
トレーニング中の公園でネコを見かけた後、一休みしたベンチで、水篠ハンターのスマホを見つけたのである。
監視課という立場上、水篠ハンターの住居は把握している、犬飼。
旬が困ることが無いよう、自宅にスマホを届けに行こうとしていたのだった。
「…俺は何も見ていない」
そう呟き、手にもつ水篠ハンターのスマホを眺める。
まぁ、急ぎの要件もないし、GPSのついたハンター協会のスマホが無くなったと分かれば、水篠ハンターから協会に連絡が来るだろう。
後ほど改めて、渡せば良いか。。
そう思い、顔を赤くした犬飼も、また家路につくのであった。
おしまい

あとがき
やっぱり美少女の学生と言えば、パンを咥えさせて走らせたいですよね!!
旬がネコから人間に戻るシーンは、ターミネーターの裸で登場するポーズみたいなイメージです。
筋肉質な旬の裸体…さぞかし素敵なことでしょう!!←
こちらはピッコマ配信中のハンターオークションの章を読んで、mizが想像力を膨らませて書いた、二次創作です。
苦手な方は閲覧をお避け下さいませ。
お目汚し、失礼します。